輪るピングドラム 20TH STATION「選んでくれてありがとう」
高倉剣山たちが率いる『ピング・フォース』は決行前夜、とあるマンションの一室に集まっていた。
人に何かを与えようとはせず、求める事ばかりしているつまらない事ばかりしている。この世界は何者にもなれない者達によって支配されている氷の世界だと主張。故に聖なる炎で世界を浄化すると、人が生きられる美しい世界を取り戻すと宣言。
「それが我々の生存戦略なのだ!」
第36次南極環境防衛隊の写真。この防衛隊が彼らがこんなテロ行為に走る何かの切っ掛けとなったのでしょうが、何があったのかはまだ明らかにならず。
こんな家族ごっこがいつまでも続くはずがないと冷たく告げる夏芽真砂子に、「家族だ」とあくまで主張を続ける高倉晶馬だが、真砂子は絶対に認めないと告げて立ち去る。
高倉冠葉に抱きかかえられながら意識を取り戻した高倉陽毬は、自分の運命の人が晶馬である事を思い出していた。
前回はいなかった晶馬がいつの間にか庭に出てきている。どうやら晶馬は本当の家族でないことを知っているようだけど、元々覚えていたのか、前回の思い出し弾を受けて思い出したのかは不明。
入院中にイメージトレーニングをしていたという陽毬の作った朝食をみんなで食べる晶馬達。
冠葉とバカなやりとりをしていた晶馬たちだが、陽毬が晶馬のみそ汁はお母さんの味がすると告げると、晶馬は高倉家の家族は自分たちだけだと暗い様子となる。
陽毬のセリフは第1話でも言っていて、その時は特に反論していなかったのに、今回になって反論するようになったのは何故なのか。取り巻く環境が変わってきたせいだろうか。
苹果と仲良くなって、多蕗の事を知って、両親に対する怒りがより強くなったのかな。
人に何かを与えようとはせず、求める事ばかりしているつまらない事ばかりしている。この世界は何者にもなれない者達によって支配されている氷の世界だと主張。故に聖なる炎で世界を浄化すると、人が生きられる美しい世界を取り戻すと宣言。
「それが我々の生存戦略なのだ!」
第36次南極環境防衛隊の写真。この防衛隊が彼らがこんなテロ行為に走る何かの切っ掛けとなったのでしょうが、何があったのかはまだ明らかにならず。
こんな家族ごっこがいつまでも続くはずがないと冷たく告げる夏芽真砂子に、「家族だ」とあくまで主張を続ける高倉晶馬だが、真砂子は絶対に認めないと告げて立ち去る。
高倉冠葉に抱きかかえられながら意識を取り戻した高倉陽毬は、自分の運命の人が晶馬である事を思い出していた。
前回はいなかった晶馬がいつの間にか庭に出てきている。どうやら晶馬は本当の家族でないことを知っているようだけど、元々覚えていたのか、前回の思い出し弾を受けて思い出したのかは不明。
入院中にイメージトレーニングをしていたという陽毬の作った朝食をみんなで食べる晶馬達。
冠葉とバカなやりとりをしていた晶馬たちだが、陽毬が晶馬のみそ汁はお母さんの味がすると告げると、晶馬は高倉家の家族は自分たちだけだと暗い様子となる。
陽毬のセリフは第1話でも言っていて、その時は特に反論していなかったのに、今回になって反論するようになったのは何故なのか。取り巻く環境が変わってきたせいだろうか。
苹果と仲良くなって、多蕗の事を知って、両親に対する怒りがより強くなったのかな。
渡瀬眞悧の下へ診察にやってきた陽毬に、眞悧はある恋の話をする。
追いかければ逃げるそんな相手にどうするのか、陽毬は追い掛けるのは疲れるから追い掛けないと告げる。
眞悧は陽毬は逃げる役しかしないのか、と告げる。
お互いに逃げれば恋は成立しない。
だが陽毬は恋なんてしないと言いながら、逃げた相手を追い掛ければ恋は実るのか? しかし逃げる相手は決して振り向かずに恋は実らないのではないのか。
キスは消費するから、キスだけではなく、果実を欲するのだという陽毬。
キスばかりしていれば空っぽになってポイされてしまう。
空っぽになってもキスをすれば良いという眞悧に、凍り付いてしまうので惨めだという陽毬。
キスというのは喩えで、自分から相手に愛情を与えることを「キス」という表現にしているのかな。
眞悧はそれでも構わない。何もしないより、キスをして凍り付く方が良いと告げる。
ここでのやり取りから、プリンセス・オブ・クリスタルとなった陽鞠がなぜ晶馬ではなく、冠葉から命を抜き取っていたのか、を察することができる気がする。
冠葉は陽鞠に惚れていて、だから命を差し出すのも厭わない。
しかし本当に陽鞠が求めているのは晶馬の方。
でも晶馬を求めて受け入れてもらえなければ、すべてが壊れてしまう。陽鞠はきっと晶馬から拒絶されることを極端に恐れているのではないか。
最初に冠葉を選んだのも、彼なら受け入れるという以外にも、彼ならばまだ受け入れられなくても耐えられたからかもしれない。
高倉家の罰は自分だけが受けるべきなのだという晶馬。
荻野目苹果の姉、荻野目桃果や多くの人を殺して苦しめる両親を決して許す事は出来ない。
罰は「自分だけ」が受けるべきだと繰り返し続ける。
「だって、陽毬は……
陽毬は僕が家族に選んだんだ」
晶馬は苹果に全てを告白する。
本当の高倉家の人間は晶馬一人だという事が、この時点で確定しています。
あの事件以来、ピング・フォースのメンバーは犯罪者と呼ばれて大勢の仲間が捕らえられた。それでも未だ彼らの中にある炎はくすぶりつづけ、今は雌伏の時であると語る剣山。
その集会の中に幼い冠葉や真砂子、夏芽マリオの姿もあった。
話を聞いていない晶馬は何故話を聞かないのか、と真砂子は冠葉を「お兄様」と呼ぶ。
何となく予想していたけど、高倉家の本当の子どもは晶馬だけで、冠葉は真砂子の兄、つまりは夏芽家の人間だったようだ。そして彼らの父親も組織の一員なんだな。
冠葉が夏芽家から金を受け取る事を拒否したのもこのせいだろう。
問題は何故冠葉が夏芽家を去って、高倉の家の人間になったのか、というところか。少なくとも彼らの父親が姿を消した後までは一緒にいた筈で、たぶん左兵衛が死んだ時もまだいたのだろう。でも少なくともこれまで出てきた陽毬の過去の記憶の時には常に家族としていた。
それに冠葉は実の弟よりも、惚れた女(=陽毬)の命を選んでいることになる。
晶馬独りぼっちでいる陽毬を見かけて声を掛ける。
ずっとこのマンションに住んでいるという陽毬に、一緒に遊ばないかと声を掛ける。
ママを待っているという陽毬に、晶馬は隣に座ってリンゴを食べないかと差し出す。
母親から知らない人から物を貰ってはダメだと教育されていた陽毬はそれを拒絶する。
この世界で始めての男女は一緒に運命の果実を食べたのだという晶馬だが、陽毬は自分の人生には運命の果実なんてないのだと告げて姿を消す。
子どもブロイラーで陽鞠が大事に持っていたマフラーは晶馬の持ち物だったんだな。
昔の陽鞠には今のような明るさがまったくない。今の明るさは晶馬と家族になったことで出来たものだったわけだ。
陽毬のために牛乳を運んできた晶馬は、捨て猫を見ている陽毬を見つける。
最初は可愛がられたが、可愛いが消費されたから捨てられたのだと語る陽毬。
ミルクを与えようとする晶馬に飼えないなら止めてくれと告げる。
「選ばれない事は、死ぬことなの」
それでもミルクを与え、貰い手が見付かるまで自分たちで世話をしようと考えた晶馬と陽毬。
猫に陽毬みたいな暖かい名前を付けようという晶馬に、陽毬は「サンちゃん」と名付ける。
サンちゃんの名前はこの子猫から来ていたのか……陽毬にペンギン3号が与えられたのも偶然ではなかった、という事かな。
だがある日、二人がやってくると子猫の姿が無くなっていた。
走り去るゴミ収集車を必死に追い掛ける晶馬だが、子どもの足で追いつく筈もなかった。
「選ばれ無かったのよ、あの子は」
「え?」
「この世界は、選ばれるか選ばれないか……
選ばれないことは……死ぬこと」
その日を最後に、陽毬はマンションから姿を消した。
「さよなら」というメッセージを残し、子どもブロイラーへ行ってしまった陽毬。
子猫はゴミ収集車が運んで行った段ボールの中にいたという事だろうけど、目張りしてあったので、管理人が段ボールに閉じ込めて捨てるようにしてしまったのか。あるいは他の住人か。
そして陽鞠も連れて行かれたわけですが、こどもブロイラーの誰から連絡を受けて子供たちを回収しているのだろう。不要だと思った親か、或いは近所の住人か、或いは町中を巡回しているのか。
剣山に子どもブロイラーについて問い掛ける晶馬は、そこに送られた子どもたちは何者にもなれない、つまりは死ぬのだと知ってしまう。
そこは剣山達にも手出しが出来ない。
大勢の子ども達がこの瞬間にも世界から消えている、だから彼らは……
しかし晶馬は必死に陽鞠を探す。
『ショウちゃんへ。
さようなら、こどもブロイラーへ行きます。
今までありがとう。
はじめて声を掛けてくれた時、本当はとても嬉しかった。
あれからね、私はショウちゃんを待つことにしたんだ。
ママは帰ってこなかったけど、私はショウちゃんを待つことが出来たから、寂しくなか ったよ。
待つって事は、辛くない事だって始めて思ったんだ。
ショウちゃんとサンちゃんと私、家族みたいで楽しかった。
だから、このマフラーは貰っていくね。
私、何があっても忘れないよ。
ショウちゃんと出会ったことは、私の宝物なんだ。
だから……もう何も怖くないよ』
陽鞠を必死に探す晶馬。
『透明にされても、この宝物は誰にも消せないよ。
暖炉で燃え残った、スズの兵隊の心臓みたいに……
だから幸せ』
『私が世界にいた事を、覚えてくれてる人がいるんだもの』
そして晶馬は倒れている陽鞠を見つける。
『地上で最初の男と女の話、私知ってたよ。
二人は罰を受けたんだ。
生きるって事は、罰なんだね。
でも、罰でもショウちゃんと一緒にいたかった。
……だから、選ばれたかった』
それが陽鞠の本心。
「運命の果実を、一緒に食べよう」
「選んでくれて、ありがとう」
陽鞠を助け出した晶馬。
この後、どうやって両親を説得して、そしてどうやって冠葉も家族になったのかも後々語られるのでしょう。
自分が陽鞠を高倉家の子どもにしてしまったのだ、陽鞠を選んだ事で彼女が罰を与えられてしまった事を苦しむ晶馬。
そんな晶馬の話を聞きながら、何もいう事の出来ない苹果。
晶馬は自分のせいで陽鞠が高倉家の人間として罰を受けなければならないのが辛い。でも、あのまま死んでしまっていた方が良かったとも言えないだけに苦しいところか。だからこそ、その憎しみの矛先は全て両親へと向けられるのだろう。喩え両親が自分たちのことを本当に愛していてくれても、彼らのした罪と、これから成そうとしている事は消えないのだから。
惚れてる男からこんな話を聞かされてしまった苹果はどうするんだろうか。
大勢の子どもたちが今も尚透明にされているこの世界を許すことは出来ない。
だからこそ、自分たちは世界を、来るべき聖なる日に浄化しなければならないのだと冠葉に語る剣山。
「そうだよ。陽鞠には治療費が必要なんだ。
陽鞠を救えるのは……俺しかいない」
自分自身に言い聞かせるよにう呟く冠葉。
微妙に冠葉と剣山の会話は噛みあってない。互いに自分の事しか見えてない感じ。
冠葉は絶対に「自分が」陽鞠を救う事に固執していて、逆にいうとその役割を晶馬に渡すまいとしているように見えるな。
ここだけ見ると剣山たちは世の中のことを本当にうれいている立派な人物に見えるが、そのための手段としてテロを行い、無関係の人を大勢死に追いやり、今も苦しめているであり、彼らが行うテロで本当に世界が正しい方向に進むとは思えない。そもそも彼らのしている事が正しいのなら、きっと桃果は自分の存在を賭けて止めなかったはず。もちろん彼らの子供たちのことを思う気持ちは本物なんだろう。だから実の子でない冠葉を庇って怪我をしたり、陽鞠もわが子同然に可愛がっていた。
晶馬や陽鞠が彼らを止めることになるのだろうか。
そして眞悧や真砂子たちがここにどのようにして関わってくるのか。
やはり鍵を握るのはピングドラム、そして桃果でしょうか。彼女は死んだのではなく、この世界から消えているっぽいからな。
ゆりもどう動くのかが気になる。
陽鞠は3ちゃんと一緒にリンゴたっぷりカレーを作って、晶馬と冠葉の帰りを待っていた。
眞悧の話を聞いた陽鞠はこれからどうするのか。
過去や謎が明らかになるにつれてますます混迷を極めていくこの作品。謎が一つ解けたらまた一つ謎ができるとか、そんな感じもあるし。
ここまでは判明している事や謎となっている部分をいくつかピックアップして、整理してみよう。
陽鞠は既に死亡しており、プリンセス・オブ・クリスタルの力で生きながらえている
陽鞠とマリオを完全に蘇らせるにはピングドラムが必要
夏芽マリオも死亡しており、渡瀬眞悧の力で生き延びている
高倉剣山と千江美はピング・フォースという組織の幹部
夏芽真砂子の父親もピング・フォースの幹部
剣山と千江美の実子は晶馬のみ
陽鞠は捨てられた子供であり、こどもブロイラーで晶馬に選ばれて家族となった
冠葉は真砂子とマリオの実の兄
桃果は運命を乗り換える日記を持っていた
桃果は日記の力で剣山たちのテロを止めようとして世界から消えた
運命日記は二つに分かれており、それぞれに半分ずつ呪文が記述されている
眞悧の目的とは何なのか
桃果はどこで日記を手に入れたのか
冠葉は何故夏芽家を捨てて、高倉の家族となったのか
剣山たちは何故、晶馬ではなく冠葉を仲間に選んでいるのか
エンディングテーマ
「Private Girl」歌:トリプルH
次回 STATION 21
生存戦略、誰にも消せないよ
・おまけ
アンデルセン童話『スズの兵隊』
『ある小さな男の子が、誕生日にすずの兵隊のおもちゃをもらいました。
1本のスプーンを溶かしなおして作ったもので、全部で25人そろっていましたが、そのうちの1人だけは足が1本しかなかったのです。
それと言うのも、この兵隊が一番最後に作られた為、すずが足りなくなってしまったのです。
それでもこの兵隊は、一本足のまましっかり立っていました。
男の子は他に、紙で出来たお城のおもちゃももらいました。
そのお城の入り口には、1人のおどり子が片足を思い切り上げて踊っています。
「ああ、あのおどり子も一本足だ。ぼくのお嫁さんにちょうどいい」
1本足の兵隊は、おどり子に一目ぼれして、その夜はおもちゃ箱の中で、おどり子から目を離さずに過ごしました。
ところがあくる朝、窓辺に置かれた一本足の兵隊は、すきま風で窓が開いたひょうしに、4階から下の道に落ちてしまったのです。
それを通りかかったワンパク小僧が見つけて、新聞紙で作った船に乗せてみぞに流しました。
「どこへ行くんだろう。はやく、あのおどり子の所に戻りたいな」
速い波にゆすぶられているうちに、新聞紙の船が破れて、すずの兵隊は水の中へ沈んでしまいました。
さて、それをエサと勘違いしたあわてん坊の魚が、すずの兵隊を飲み込んでしまいました。
やがてその魚は漁師に釣られて、それを買ったある家のお手伝いさんが魚のお腹を包丁で切り開いてビックリ。
「あら、この兵隊は確か・・・」
何と魚が買われていった家は、元の持ち主の男の子の家だったのです。
テーブルには、あのお城も乗っていて、おどり子はあいかわらず足を高く上げていました。
「やあ、ようやく帰って来た。ただいま、おどり子さん」
一本足の兵隊がじっとおどり子を見つめていると、持ち主の男の子が一本足の兵隊をつかんで言いました。
「一本足の兵隊なんて、もういらないや」
そして燃えさかるストーブの中に、放り込んでしまったのです。
兵隊は自分の身体が溶けていくのを感じましたが、どうする事も出来ません。
「さよなら、おどり子さん。いつまでもお元気で」
その時、ふいに窓が開いて風が吹き込み、紙のおどり子がヒラヒラと舞い上がるとストーブの中の兵隊のところへ飛び込んできました。
「やあ、来てくれたんだね。ありがとう、花嫁さん」
やがて紙のおどり子は燃え尽き、すずの兵隊もすっかり溶けてしまってハート型の小さな固まりになりました。』
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追いかければ逃げるそんな相手にどうするのか、陽毬は追い掛けるのは疲れるから追い掛けないと告げる。
眞悧は陽毬は逃げる役しかしないのか、と告げる。
お互いに逃げれば恋は成立しない。
だが陽毬は恋なんてしないと言いながら、逃げた相手を追い掛ければ恋は実るのか? しかし逃げる相手は決して振り向かずに恋は実らないのではないのか。
キスは消費するから、キスだけではなく、果実を欲するのだという陽毬。
キスばかりしていれば空っぽになってポイされてしまう。
空っぽになってもキスをすれば良いという眞悧に、凍り付いてしまうので惨めだという陽毬。
キスというのは喩えで、自分から相手に愛情を与えることを「キス」という表現にしているのかな。
眞悧はそれでも構わない。何もしないより、キスをして凍り付く方が良いと告げる。
ここでのやり取りから、プリンセス・オブ・クリスタルとなった陽鞠がなぜ晶馬ではなく、冠葉から命を抜き取っていたのか、を察することができる気がする。
冠葉は陽鞠に惚れていて、だから命を差し出すのも厭わない。
しかし本当に陽鞠が求めているのは晶馬の方。
でも晶馬を求めて受け入れてもらえなければ、すべてが壊れてしまう。陽鞠はきっと晶馬から拒絶されることを極端に恐れているのではないか。
最初に冠葉を選んだのも、彼なら受け入れるという以外にも、彼ならばまだ受け入れられなくても耐えられたからかもしれない。
高倉家の罰は自分だけが受けるべきなのだという晶馬。
荻野目苹果の姉、荻野目桃果や多くの人を殺して苦しめる両親を決して許す事は出来ない。
罰は「自分だけ」が受けるべきだと繰り返し続ける。
「だって、陽毬は……
陽毬は僕が家族に選んだんだ」
晶馬は苹果に全てを告白する。
本当の高倉家の人間は晶馬一人だという事が、この時点で確定しています。
あの事件以来、ピング・フォースのメンバーは犯罪者と呼ばれて大勢の仲間が捕らえられた。それでも未だ彼らの中にある炎はくすぶりつづけ、今は雌伏の時であると語る剣山。
その集会の中に幼い冠葉や真砂子、夏芽マリオの姿もあった。
話を聞いていない晶馬は何故話を聞かないのか、と真砂子は冠葉を「お兄様」と呼ぶ。
何となく予想していたけど、高倉家の本当の子どもは晶馬だけで、冠葉は真砂子の兄、つまりは夏芽家の人間だったようだ。そして彼らの父親も組織の一員なんだな。
冠葉が夏芽家から金を受け取る事を拒否したのもこのせいだろう。
問題は何故冠葉が夏芽家を去って、高倉の家の人間になったのか、というところか。少なくとも彼らの父親が姿を消した後までは一緒にいた筈で、たぶん左兵衛が死んだ時もまだいたのだろう。でも少なくともこれまで出てきた陽毬の過去の記憶の時には常に家族としていた。
それに冠葉は実の弟よりも、惚れた女(=陽毬)の命を選んでいることになる。
晶馬独りぼっちでいる陽毬を見かけて声を掛ける。
ずっとこのマンションに住んでいるという陽毬に、一緒に遊ばないかと声を掛ける。
ママを待っているという陽毬に、晶馬は隣に座ってリンゴを食べないかと差し出す。
母親から知らない人から物を貰ってはダメだと教育されていた陽毬はそれを拒絶する。
この世界で始めての男女は一緒に運命の果実を食べたのだという晶馬だが、陽毬は自分の人生には運命の果実なんてないのだと告げて姿を消す。
子どもブロイラーで陽鞠が大事に持っていたマフラーは晶馬の持ち物だったんだな。
昔の陽鞠には今のような明るさがまったくない。今の明るさは晶馬と家族になったことで出来たものだったわけだ。
陽毬のために牛乳を運んできた晶馬は、捨て猫を見ている陽毬を見つける。
最初は可愛がられたが、可愛いが消費されたから捨てられたのだと語る陽毬。
ミルクを与えようとする晶馬に飼えないなら止めてくれと告げる。
「選ばれない事は、死ぬことなの」
それでもミルクを与え、貰い手が見付かるまで自分たちで世話をしようと考えた晶馬と陽毬。
猫に陽毬みたいな暖かい名前を付けようという晶馬に、陽毬は「サンちゃん」と名付ける。
サンちゃんの名前はこの子猫から来ていたのか……陽毬にペンギン3号が与えられたのも偶然ではなかった、という事かな。
だがある日、二人がやってくると子猫の姿が無くなっていた。
走り去るゴミ収集車を必死に追い掛ける晶馬だが、子どもの足で追いつく筈もなかった。
「選ばれ無かったのよ、あの子は」
「え?」
「この世界は、選ばれるか選ばれないか……
選ばれないことは……死ぬこと」
その日を最後に、陽毬はマンションから姿を消した。
「さよなら」というメッセージを残し、子どもブロイラーへ行ってしまった陽毬。
子猫はゴミ収集車が運んで行った段ボールの中にいたという事だろうけど、目張りしてあったので、管理人が段ボールに閉じ込めて捨てるようにしてしまったのか。あるいは他の住人か。
そして陽鞠も連れて行かれたわけですが、こどもブロイラーの誰から連絡を受けて子供たちを回収しているのだろう。不要だと思った親か、或いは近所の住人か、或いは町中を巡回しているのか。
剣山に子どもブロイラーについて問い掛ける晶馬は、そこに送られた子どもたちは何者にもなれない、つまりは死ぬのだと知ってしまう。
そこは剣山達にも手出しが出来ない。
大勢の子ども達がこの瞬間にも世界から消えている、だから彼らは……
しかし晶馬は必死に陽鞠を探す。
『ショウちゃんへ。
さようなら、こどもブロイラーへ行きます。
今までありがとう。
はじめて声を掛けてくれた時、本当はとても嬉しかった。
あれからね、私はショウちゃんを待つことにしたんだ。
ママは帰ってこなかったけど、私はショウちゃんを待つことが出来たから、寂しくなか ったよ。
待つって事は、辛くない事だって始めて思ったんだ。
ショウちゃんとサンちゃんと私、家族みたいで楽しかった。
だから、このマフラーは貰っていくね。
私、何があっても忘れないよ。
ショウちゃんと出会ったことは、私の宝物なんだ。
だから……もう何も怖くないよ』
陽鞠を必死に探す晶馬。
『透明にされても、この宝物は誰にも消せないよ。
暖炉で燃え残った、スズの兵隊の心臓みたいに……
だから幸せ』
『私が世界にいた事を、覚えてくれてる人がいるんだもの』
そして晶馬は倒れている陽鞠を見つける。
『地上で最初の男と女の話、私知ってたよ。
二人は罰を受けたんだ。
生きるって事は、罰なんだね。
でも、罰でもショウちゃんと一緒にいたかった。
……だから、選ばれたかった』
それが陽鞠の本心。
「運命の果実を、一緒に食べよう」
「選んでくれて、ありがとう」
陽鞠を助け出した晶馬。
この後、どうやって両親を説得して、そしてどうやって冠葉も家族になったのかも後々語られるのでしょう。
自分が陽鞠を高倉家の子どもにしてしまったのだ、陽鞠を選んだ事で彼女が罰を与えられてしまった事を苦しむ晶馬。
そんな晶馬の話を聞きながら、何もいう事の出来ない苹果。
晶馬は自分のせいで陽鞠が高倉家の人間として罰を受けなければならないのが辛い。でも、あのまま死んでしまっていた方が良かったとも言えないだけに苦しいところか。だからこそ、その憎しみの矛先は全て両親へと向けられるのだろう。喩え両親が自分たちのことを本当に愛していてくれても、彼らのした罪と、これから成そうとしている事は消えないのだから。
惚れてる男からこんな話を聞かされてしまった苹果はどうするんだろうか。
大勢の子どもたちが今も尚透明にされているこの世界を許すことは出来ない。
だからこそ、自分たちは世界を、来るべき聖なる日に浄化しなければならないのだと冠葉に語る剣山。
「そうだよ。陽鞠には治療費が必要なんだ。
陽鞠を救えるのは……俺しかいない」
自分自身に言い聞かせるよにう呟く冠葉。
微妙に冠葉と剣山の会話は噛みあってない。互いに自分の事しか見えてない感じ。
冠葉は絶対に「自分が」陽鞠を救う事に固執していて、逆にいうとその役割を晶馬に渡すまいとしているように見えるな。
ここだけ見ると剣山たちは世の中のことを本当にうれいている立派な人物に見えるが、そのための手段としてテロを行い、無関係の人を大勢死に追いやり、今も苦しめているであり、彼らが行うテロで本当に世界が正しい方向に進むとは思えない。そもそも彼らのしている事が正しいのなら、きっと桃果は自分の存在を賭けて止めなかったはず。もちろん彼らの子供たちのことを思う気持ちは本物なんだろう。だから実の子でない冠葉を庇って怪我をしたり、陽鞠もわが子同然に可愛がっていた。
晶馬や陽鞠が彼らを止めることになるのだろうか。
そして眞悧や真砂子たちがここにどのようにして関わってくるのか。
やはり鍵を握るのはピングドラム、そして桃果でしょうか。彼女は死んだのではなく、この世界から消えているっぽいからな。
ゆりもどう動くのかが気になる。
陽鞠は3ちゃんと一緒にリンゴたっぷりカレーを作って、晶馬と冠葉の帰りを待っていた。
眞悧の話を聞いた陽鞠はこれからどうするのか。
過去や謎が明らかになるにつれてますます混迷を極めていくこの作品。謎が一つ解けたらまた一つ謎ができるとか、そんな感じもあるし。
ここまでは判明している事や謎となっている部分をいくつかピックアップして、整理してみよう。
陽鞠は既に死亡しており、プリンセス・オブ・クリスタルの力で生きながらえている
陽鞠とマリオを完全に蘇らせるにはピングドラムが必要
夏芽マリオも死亡しており、渡瀬眞悧の力で生き延びている
高倉剣山と千江美はピング・フォースという組織の幹部
夏芽真砂子の父親もピング・フォースの幹部
剣山と千江美の実子は晶馬のみ
陽鞠は捨てられた子供であり、こどもブロイラーで晶馬に選ばれて家族となった
冠葉は真砂子とマリオの実の兄
桃果は運命を乗り換える日記を持っていた
桃果は日記の力で剣山たちのテロを止めようとして世界から消えた
運命日記は二つに分かれており、それぞれに半分ずつ呪文が記述されている
眞悧の目的とは何なのか
桃果はどこで日記を手に入れたのか
冠葉は何故夏芽家を捨てて、高倉の家族となったのか
剣山たちは何故、晶馬ではなく冠葉を仲間に選んでいるのか
エンディングテーマ
「Private Girl」歌:トリプルH
次回 STATION 21
生存戦略、誰にも消せないよ
・おまけ
アンデルセン童話『スズの兵隊』
『ある小さな男の子が、誕生日にすずの兵隊のおもちゃをもらいました。
1本のスプーンを溶かしなおして作ったもので、全部で25人そろっていましたが、そのうちの1人だけは足が1本しかなかったのです。
それと言うのも、この兵隊が一番最後に作られた為、すずが足りなくなってしまったのです。
それでもこの兵隊は、一本足のまましっかり立っていました。
男の子は他に、紙で出来たお城のおもちゃももらいました。
そのお城の入り口には、1人のおどり子が片足を思い切り上げて踊っています。
「ああ、あのおどり子も一本足だ。ぼくのお嫁さんにちょうどいい」
1本足の兵隊は、おどり子に一目ぼれして、その夜はおもちゃ箱の中で、おどり子から目を離さずに過ごしました。
ところがあくる朝、窓辺に置かれた一本足の兵隊は、すきま風で窓が開いたひょうしに、4階から下の道に落ちてしまったのです。
それを通りかかったワンパク小僧が見つけて、新聞紙で作った船に乗せてみぞに流しました。
「どこへ行くんだろう。はやく、あのおどり子の所に戻りたいな」
速い波にゆすぶられているうちに、新聞紙の船が破れて、すずの兵隊は水の中へ沈んでしまいました。
さて、それをエサと勘違いしたあわてん坊の魚が、すずの兵隊を飲み込んでしまいました。
やがてその魚は漁師に釣られて、それを買ったある家のお手伝いさんが魚のお腹を包丁で切り開いてビックリ。
「あら、この兵隊は確か・・・」
何と魚が買われていった家は、元の持ち主の男の子の家だったのです。
テーブルには、あのお城も乗っていて、おどり子はあいかわらず足を高く上げていました。
「やあ、ようやく帰って来た。ただいま、おどり子さん」
一本足の兵隊がじっとおどり子を見つめていると、持ち主の男の子が一本足の兵隊をつかんで言いました。
「一本足の兵隊なんて、もういらないや」
そして燃えさかるストーブの中に、放り込んでしまったのです。
兵隊は自分の身体が溶けていくのを感じましたが、どうする事も出来ません。
「さよなら、おどり子さん。いつまでもお元気で」
その時、ふいに窓が開いて風が吹き込み、紙のおどり子がヒラヒラと舞い上がるとストーブの中の兵隊のところへ飛び込んできました。
「やあ、来てくれたんだね。ありがとう、花嫁さん」
やがて紙のおどり子は燃え尽き、すずの兵隊もすっかり溶けてしまってハート型の小さな固まりになりました。』


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