小川の辺 レビュー(ネタばれあり)
【ストーリー】
海坂藩の藩士・戊井朔之助(東山紀之)は家老・助川権之丞(笹野高史)から脱藩した藩士・佐久間森衛(片岡愛之助)を追跡していた侍が戻ってきた事を知らされる。だが、彼は討ち果たしてきたのではなく、病によって戻ってきたのだ。
家老は代わって朔之助に追手を命じるが、朔之助はこの拝命を一度は断る。
なぜなら、脱藩した藩士は彼の親友であり、妹婿だったのだ。
だが彼と渡り合える剣の腕を持つのは朔之助だけであり、複数の追手を差し向ければ腕に覚えのある妹・田鶴(菊地凛子)も手向かいしてしまう。藩士は死罪なれど、妹は罪に問わぬというのが藩主の意向である。
妹を救うため、そして城下で妹が藩士を唆したという噂が広まっており、ここで朔之助が辞退すれば戊井家も罪に問われる事になるやも知れぬと、朔之助は追手となる覚悟を決める。
その事を嘆く母・以瀬(松原智恵子)だが、父・戌井忠左衛門(藤竜也)は主命ならば止むをえないと語る。そんな忠左衛門に彼が田鶴や朔之助に剣など教えたせいだと強く批難する以瀬。
朔之助の妻・幾久(尾野真千子)はそれらのやりとりをただ黙って見つめていた。
兄妹で戦うことになるかもしれない夫の身を案じる幾久は、朔之助の旅支度を整えると、衣裳の中にそっと御守りを忍ばせる。
戌井家に勤める奉公人・新蔵(勝地涼)は幼き日から奉公しており、朔之助や田鶴と兄弟のように育ってきていた。田鶴が手向かってきた時の事を案じる彼は、朔之助に旅の動向を申し出る。決闘の場に居合わせれば田鶴は手向かいするのは明白であるため、自分が田鶴を引き離す役目をするという彼を朔之助は供に連れてゆく事となった。。
佐久間の居所は先の侍が既に掴んでいた。
海坂藩城下から徒歩でおよそ10日ほどの距離にある宿場町行徳で買い物をする田鶴が目撃されていたのだ。
行徳へと向かう道中、新蔵は朔之助に佐久間が脱藩しなければならないほどの罪を犯したのかと問うと、朔之助は彼が脱藩に至るまでの経緯を語り始める。
海坂藩はここ2年凶作に喘いでいた。
佐久間はこの凶作に対して独自の意見書を作成すると、なんと藩主に上告してしまったのだ。
藩主は侍医・鹿沢堯伯(西岡徳馬)の意見を取り入れて、2年の間に様々な対策を実施していたが、佐久間の意見書はこれらを否定してしまう代物だった。
侍医でありながらも藩主に気に入られて家老たちさえも頭が上がらぬほどの権力を身に付けた堯伯は、藩主にこれは彼に対する侮辱であると吹き込む。
堯伯は家老たちにこの意見書の事をまさか彼らが知っていて、上申を許したのではないか、と脅しめいた言葉を口にする。
保身のために潔白を口にする家老たち。
だがこれで終わっていれば、佐久間も今ほどには至らなかった。
佐久間は藩主の前で直訴をしたのだ。
領民が苦しんでおり、これらはただ凶作だけではなくここ2年の失策が影響していると訴えかけると、侍医などの言葉に耳を貸さぬようにと嘆願する。
この佐久間の訴えを好機と見たのは家老たちだった。
彼らは佐久間の意見に賛同すると、堯伯の失墜に成功したのだ。
佐久間の案を取り入れた改革は着実に成果を上げていた。
だが彼の案が正しければ正しいほどに、今まで行ってきた事が否定される藩主にとっては面白くない。
佐久間は危険を感じて脱藩したのだという。
新蔵に話しているうちに、朔之助はもしかすると最初からその覚悟をしていたのかもしれない、と考えるようになる。
そして行徳宿までの旅路をゆっくりと進む事とする。
親の敵討ちをしようとする姉弟と、刀を売り払ってしまい竹光しか持たない浪人のどたばたを目撃したりしながらの道中、朔之助は田鶴との思い出を振り返る。
幼い頃から朔之助の言葉には意固地なまでに従おうとしなかった田鶴は、新蔵の言葉だけは耳を貸していた。朔之助は自分の言葉には耳を貸さずとも、新蔵にならば田鶴も従うかもしれないと感じる。
朔之助の帰りを待つ戊井家の者たちは様々な思いを巡らせていた。
以瀬は田鶴の幼いころの着物を大切にとっており、朔之助と幾久の間に子が生まれたら使おうと思っていると語る。
幾久は庭の木が例年ならば既に花を咲かせる時期であるにも関わらず、未だ花が咲かないのを気に掛けていた。
忠左衛門は遺書をしたためると、父から譲り受けたという墨と硯を書を嗜まない朔之助に代わって幾久に託す。
そうして朔之助と新蔵は遂に行徳宿へと辿りつく。
成田山へのお参りだという事にして宿を取った二人は、新蔵が町を巡回して田鶴を探し求める。
田鶴を探す新蔵は、田鶴の嫁入り前日の事を思い出す。
佐久間との婚姻を控えた田鶴は、作業中だった新蔵の下を訪れる。
新蔵とは結婚する事が出来ないという田鶴は、着物を脱ぎ棄てて腰巻一つとなると、新蔵に抱きついて好きだと伝え、新蔵の本心を聞き出す。
新蔵もまた田鶴を愛していたのだ。
だが奉公人の新蔵が田鶴と結ばれる事はなく、田鶴を探す女中の声で二人は別れる事となった。
新蔵が田鶴を待つ間、人目のつかぬ場所で剣の稽古をする朔之助は、佐久間と行った御前試合の事を思い出す。
実力亀甲の両者。青眼・八双・上段・下段、両者は様々な構えを取りながら、剣を打ちあい、鍔迫り合い、一進一退の勝負を繰り広げる。
三本勝負を行った両者、一本目は朔之助が胴を決め、二本目は佐久間が面を取った。
だが二本目の途中から激しい雨が降り注ぎ、2人の勝負は三本目の決着を付けずに終わった。
田鶴を探し続ける新蔵は、ついに買い物をする田鶴を目撃すると、その後を追跡する。
宿場町から離れた川辺にある小屋同然の襤褸屋に、田鶴と佐久間は住んでいた。
だが新蔵はすぐに朔之助にその事を伝えなかった。
彼は5日間に渡って田鶴の動向を見張り続け、田鶴が2日に一度買い物へ出かけ、一時は戻らない事を確認した後に朔之助に報告。
話を聞いた朔之助は田鶴が出払う時を見計らい、佐久間との勝負に挑む。
佐久間は姿を見せた朔之助に驚く事無く、やはり彼が来たかと身支度を整えると勝負に応じる。
あの日の三本目の決着が、命を賭けた戦いが始まる。
・キャスト
戊井朔之助:東山紀之
田鶴:菊地凛子
新蔵:勝地涼
佐久間森衛:片岡愛之助
幾久:尾野真千子
以瀬:松原智恵子
助川権之丞:笹野高史
鹿沢堯伯:西岡徳馬
戌井忠左衛門:藤竜也
公式サイト:http://www.ogawa-no-hotori.com/
大どんでん返しなど意外な展開はなく、安心してみる事の出来る作品と言える。
ヒガシはいい役者になったな。とてもジャニーズアイドルとは思えない。武士姿も勝地涼はどこか違和感があるのに対して、全く違和感を感じさせないし。
決闘前の沐浴のシーンで披露されたヒガシは相変わらず良い体してるよな。
話は架空の藩・海坂藩を脱藩した親友であり、妹の旦那を討つ事を命じられた主人公・朔之助が妹や佐久間との思い出を振り返りつつ決着へと向かうお話。
新蔵が田鶴に恋心を抱いているというのは直ぐに判ったけど、田鶴の方の思いは徐々に明かされていく感じ。
惚れた男がいながら、身分の違いから別の男に嫁ぐことになって、その夫の脱藩に同行するというのは、武士の妻として一度添い遂げたら共にいるという強い意志によるものなのだろう。
田鶴が幼いころから何故あれほどまでに朔之助に対して反抗的だったのかが判らない。
確かに武士の子として妹にも厳しく当たっていたようではあるが。
しかし佐久間と田鶴はどうやって生計を立てていたのかが気になる。
田鶴が働いている様子も無く、佐久間はほとんどあの小屋から出ていなかったという事を考えると、内職でもして稼ぎを作っていたのだろうか。田鶴が買い物へ出かける時にそれらを売っていたとするなら理解できるけど、何も持っていなかった気もするし……
忠左衛門が遺書まで用意したのは、もしも朔之助が失敗した時には死ぬつもりをしていたからなのか。その辺の感情についてちゃんと描かれなかったのでハッキリ判らない。
田鶴と新蔵はあの後どうしたのか。
屋敷に戻ってきたのか、あのままあそこで暮らし続けたのか。
新蔵は武士じゃないから脱藩扱いにはならないのかな。
田鶴は田鶴が脱藩を唆したという噂が立っていたぐらいなので、戻ったとしてももう嫁の貰い手はないだろうから、朔之助が口添えしてやれば新蔵と結婚する事も出来そうな気もする。
この2人の関係を序盤から少しずつ描いていった事で、最後も後味の悪さが無かったのは良かったと思う。
個人的にこーゆー落ち着いた作品は嫌いじゃない。
個人的評価:70点
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海坂藩城下から徒歩でおよそ10日ほどの距離にある宿場町行徳で買い物をする田鶴が目撃されていたのだ。
行徳へと向かう道中、新蔵は朔之助に佐久間が脱藩しなければならないほどの罪を犯したのかと問うと、朔之助は彼が脱藩に至るまでの経緯を語り始める。
海坂藩はここ2年凶作に喘いでいた。
佐久間はこの凶作に対して独自の意見書を作成すると、なんと藩主に上告してしまったのだ。
藩主は侍医・鹿沢堯伯(西岡徳馬)の意見を取り入れて、2年の間に様々な対策を実施していたが、佐久間の意見書はこれらを否定してしまう代物だった。
侍医でありながらも藩主に気に入られて家老たちさえも頭が上がらぬほどの権力を身に付けた堯伯は、藩主にこれは彼に対する侮辱であると吹き込む。
堯伯は家老たちにこの意見書の事をまさか彼らが知っていて、上申を許したのではないか、と脅しめいた言葉を口にする。
保身のために潔白を口にする家老たち。
だがこれで終わっていれば、佐久間も今ほどには至らなかった。
佐久間は藩主の前で直訴をしたのだ。
領民が苦しんでおり、これらはただ凶作だけではなくここ2年の失策が影響していると訴えかけると、侍医などの言葉に耳を貸さぬようにと嘆願する。
この佐久間の訴えを好機と見たのは家老たちだった。
彼らは佐久間の意見に賛同すると、堯伯の失墜に成功したのだ。
佐久間の案を取り入れた改革は着実に成果を上げていた。
だが彼の案が正しければ正しいほどに、今まで行ってきた事が否定される藩主にとっては面白くない。
佐久間は危険を感じて脱藩したのだという。
新蔵に話しているうちに、朔之助はもしかすると最初からその覚悟をしていたのかもしれない、と考えるようになる。
そして行徳宿までの旅路をゆっくりと進む事とする。
親の敵討ちをしようとする姉弟と、刀を売り払ってしまい竹光しか持たない浪人のどたばたを目撃したりしながらの道中、朔之助は田鶴との思い出を振り返る。
幼い頃から朔之助の言葉には意固地なまでに従おうとしなかった田鶴は、新蔵の言葉だけは耳を貸していた。朔之助は自分の言葉には耳を貸さずとも、新蔵にならば田鶴も従うかもしれないと感じる。
朔之助の帰りを待つ戊井家の者たちは様々な思いを巡らせていた。
以瀬は田鶴の幼いころの着物を大切にとっており、朔之助と幾久の間に子が生まれたら使おうと思っていると語る。
幾久は庭の木が例年ならば既に花を咲かせる時期であるにも関わらず、未だ花が咲かないのを気に掛けていた。
忠左衛門は遺書をしたためると、父から譲り受けたという墨と硯を書を嗜まない朔之助に代わって幾久に託す。
そうして朔之助と新蔵は遂に行徳宿へと辿りつく。
成田山へのお参りだという事にして宿を取った二人は、新蔵が町を巡回して田鶴を探し求める。
田鶴を探す新蔵は、田鶴の嫁入り前日の事を思い出す。
佐久間との婚姻を控えた田鶴は、作業中だった新蔵の下を訪れる。
新蔵とは結婚する事が出来ないという田鶴は、着物を脱ぎ棄てて腰巻一つとなると、新蔵に抱きついて好きだと伝え、新蔵の本心を聞き出す。
新蔵もまた田鶴を愛していたのだ。
だが奉公人の新蔵が田鶴と結ばれる事はなく、田鶴を探す女中の声で二人は別れる事となった。
新蔵が田鶴を待つ間、人目のつかぬ場所で剣の稽古をする朔之助は、佐久間と行った御前試合の事を思い出す。
実力亀甲の両者。青眼・八双・上段・下段、両者は様々な構えを取りながら、剣を打ちあい、鍔迫り合い、一進一退の勝負を繰り広げる。
三本勝負を行った両者、一本目は朔之助が胴を決め、二本目は佐久間が面を取った。
だが二本目の途中から激しい雨が降り注ぎ、2人の勝負は三本目の決着を付けずに終わった。
田鶴を探し続ける新蔵は、ついに買い物をする田鶴を目撃すると、その後を追跡する。
宿場町から離れた川辺にある小屋同然の襤褸屋に、田鶴と佐久間は住んでいた。
だが新蔵はすぐに朔之助にその事を伝えなかった。
彼は5日間に渡って田鶴の動向を見張り続け、田鶴が2日に一度買い物へ出かけ、一時は戻らない事を確認した後に朔之助に報告。
話を聞いた朔之助は田鶴が出払う時を見計らい、佐久間との勝負に挑む。
佐久間は姿を見せた朔之助に驚く事無く、やはり彼が来たかと身支度を整えると勝負に応じる。
あの日の三本目の決着が、命を賭けた戦いが始まる。
・キャスト
戊井朔之助:東山紀之
田鶴:菊地凛子
新蔵:勝地涼
佐久間森衛:片岡愛之助
幾久:尾野真千子
以瀬:松原智恵子
助川権之丞:笹野高史
鹿沢堯伯:西岡徳馬
戌井忠左衛門:藤竜也
公式サイト:http://www.ogawa-no-hotori.com/
【ストーリー】
藤沢周平の短編小説を映画化した時代劇。大どんでん返しなど意外な展開はなく、安心してみる事の出来る作品と言える。
ヒガシはいい役者になったな。とてもジャニーズアイドルとは思えない。武士姿も勝地涼はどこか違和感があるのに対して、全く違和感を感じさせないし。
決闘前の沐浴のシーンで披露されたヒガシは相変わらず良い体してるよな。
話は架空の藩・海坂藩を脱藩した親友であり、妹の旦那を討つ事を命じられた主人公・朔之助が妹や佐久間との思い出を振り返りつつ決着へと向かうお話。
新蔵が田鶴に恋心を抱いているというのは直ぐに判ったけど、田鶴の方の思いは徐々に明かされていく感じ。
惚れた男がいながら、身分の違いから別の男に嫁ぐことになって、その夫の脱藩に同行するというのは、武士の妻として一度添い遂げたら共にいるという強い意志によるものなのだろう。
田鶴が幼いころから何故あれほどまでに朔之助に対して反抗的だったのかが判らない。
確かに武士の子として妹にも厳しく当たっていたようではあるが。
しかし佐久間と田鶴はどうやって生計を立てていたのかが気になる。
田鶴が働いている様子も無く、佐久間はほとんどあの小屋から出ていなかったという事を考えると、内職でもして稼ぎを作っていたのだろうか。田鶴が買い物へ出かける時にそれらを売っていたとするなら理解できるけど、何も持っていなかった気もするし……
忠左衛門が遺書まで用意したのは、もしも朔之助が失敗した時には死ぬつもりをしていたからなのか。その辺の感情についてちゃんと描かれなかったのでハッキリ判らない。
田鶴と新蔵はあの後どうしたのか。
屋敷に戻ってきたのか、あのままあそこで暮らし続けたのか。
新蔵は武士じゃないから脱藩扱いにはならないのかな。
田鶴は田鶴が脱藩を唆したという噂が立っていたぐらいなので、戻ったとしてももう嫁の貰い手はないだろうから、朔之助が口添えしてやれば新蔵と結婚する事も出来そうな気もする。
この2人の関係を序盤から少しずつ描いていった事で、最後も後味の悪さが無かったのは良かったと思う。
個人的にこーゆー落ち着いた作品は嫌いじゃない。
個人的評価:70点


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